目利きの出来る料理人が最適な素材を
最高のレシピで仕上げる。食べる人に
おいしい時間と笑みのコボれる会話を
提供する。
明日になれば何も残らない。
しかしその記憶は消えず、また予約し
たくなる。
広告が元気だった80年代、私たちは料
理人を目指して就職した。天才や巨匠
と呼ばれる演出家はやっと通った企画
を見事に裏切り、自分の企画に書き換
え、代理店や制作会社を困らせた。
しかしその骨子だけをくみ取り、ビジ
ュアル化したものは、時代をヒット曲
のようにリードした。
宣伝部長も、企画と仕上がりの違いを
知っていたので、演出家の芸術を楽し
んでいた。
合成が主流になり、ブルーバック時代
になると巨匠のロケは減った。
ダウンサイジング。
5000万を2000万で出来るなら、と制
作費圧縮は加速した。
スタジオがブルーからグリーンに変わ
ると、社内演出を多用するようになっ
た。外注より安く仕上げることで利
益率を上げないと制作会社が維持
できない。
難しい巨匠で手こずるより、言うこと
を聞く人材が重宝がられる。
スタバのコーヒー350円で十分。800円
のブルマンはいらないってことだ。
いい大人がスタバで満足できるはず
はない。味だけでなく、珈琲は時を楽
しむもの。
あらゆることが合理化され、欧米化す
ると言うのなら、広告もAE制を導入
し、競合で勝ったクリエイティブディ
レクターは2年間広告主の宣伝部長
として販促も含め商品の命を引きう
けるべきである。
広告主も競合の在り方を合理的に活
用し、外部部長に責任を負わせ、2年
間で右肩が下がったらクビ。
社内の宣伝の素人が判断する必要
もない。数字だけの判断でいいし、
無駄な会議も必要なし。
附属物である装飾(タレント)に多額
の契約金を払うことで企業が得する
ことはない。
商品という素材と料理人が食する人
たちの記憶の中に残れるかどうか。
SNSでもOOHでもなく、答えはど真ん
中のTVでしかない。変わる事のない
<人の記憶に残す仕事>だから。
人は常においしいものを求めている。
味わうほどに、脳はまずいものを否
定する。