2011年7月22日金曜日

映画産業の舞台裏 ②

アメリカは国家戦略でコンテンツ産業を守っている。
1970年連邦通信委員会で採択されたフィン・シン・
ルール。番組制作会社保護育成のため、三大ネット
ワークが外部制作番組の配給・販売権と所有権を
持つことを禁止する。
自社制作の番組を放送後一定期間で市場に出さな
ければならないこと。

1995年に廃止されるが、メジャースタジオが制作をし
TV局は買い付ける事で力を分散させることにある。
また、1971年同委員会はTVのプライムタイム(19-23時)
の4時間を自社制作で埋めることを禁じ、最低1時間は
ネットワーク以外の制作番組を放送しなければならな
いプライムタイム・アクセス・ルールを採択した。

映画では、メジャーが興行会社を持つことは独占禁止
法(TV同様占有するため)に触れるため、興行ネットワーク
はメジャー会社と自由に取引可能なフリーブッキングが
適応されている。(ハリーポッターは11,000スクリーン)

これらにより、自由競争の原理が働き、優良コンテンツ
をつくる才能も集まり、たくさんのコンテンツを支える資
金調達の銀行融資機能も成長する。 もちろんビジネス
としての教育機関、大学の役割も発達し、産業としての
サイクルが形成されていく。

しかし日本はこれを導入しなかった。
高度成長まっしぐらの日本経済は、都市計画というハ
ードウェアが中心でソフトなんかに気を配る余裕なんか
ない。まるでいまの上海のよう。

ソニーの元会長出井さんのアドバイスでやっと知的財
産の価値を理解したのが小泉さん。続く麻生さんも漫
画好きで追従支援を開始した。
しかし前出のようにコンテンツ信託化にみずほ・住友・
三菱東京UFJも参入したが、映画配給の壁(1800円ルール)
 は超えられず、電通の製作委員会方式によるリスク
ヘッジ(自社メディアへの配分)が定着しているのが現実。

映画再興に挑んだのが出版系角川映画。豊富な自社
コンテンツと資金力で大作と呼ばれる作品を残した。
配給ではドリームワークスに100億も投下し、上位3社の
肝を冷やしたが、ドリームワークスがヒット作を生み出せ
ず、100億効果は消えてしまった。

USENもGAGAを買収、高額買付けと自社製作に挑む
が採算が取れずSOFTBANKに売却した。
同時期ライブドアも参入し、安価な自社製作配給興行を
試したが、これはTVレベルで自滅した。

映画館で見ない人たちを動かすアクションは数々あった。
しかしもうレンタルDVDでいいと思った人たち8600万人の
ココロを動かすには国家戦略がないと出来ない。
経済産業省は仕事が多すぎて難しいので、文部科学省
傘下に映画庁をつくりコンテンツ育成をする。
独占する興行を分離し、フランスの国家戦略をヒントに
再度チャレンジするのである。

もちろん首相が動かないと出来ない。産業だから知的
財産の次世代リーダーを育成することを前提にする。
その時、基準言語は英語である。日本人であっても、
英語でセリフを言い、俳優自ら自分で日本語吹き替え。
自国だけでなく他国に配給することを前提にビジネスを
開発しなければ投資家や銀行を納得させられない。

映画館では4200万人しか見ない国だから。
ゴルフに当てはめればご理解できよう。Ai Miyazatoが
アメリカで活躍する。追従する後輩も渡米する。国内
で活躍しても世界では認知されない。認知される場所
で共通言語で勝負する。それがメジャールール。

アカデミー賞外国語賞ではだめなのです。英語でアメ
リカ配給。本国の審査員の目に触れ評価を得ること。
もう40年遅れてしまったのだから。

コンテンツ市場の未来をまとめたみずほ・データ2004