2011年7月29日金曜日

三洋電機メモリーズ

古い話で申し訳ないです。日曜朝の定番でTBS
兼高かおる世界の旅>という番組がありました。
1960年から90年までの30年間で世界を180周した
ギネス級旅行番組。

ジャーナリストでインド人ハーフの兼高かおるさん
が、独特な上品な口調で、自分の撮影してきたヴィ
デオをナレーターの芥川隆行さんに説明する番組。
プロデューサー兼ディレクター兼レポーター兼ナレ
ーター。時には自分でカメラを回す。

とにかく英語がネイティブで、PARISをパリ―という
発音が面白く、兼高さんのおかげでテレビの中で世
界中を旅する事が楽しんだ。その一社提供が三洋
電機。もちろん三洋の社長の大のお気に入り番組。

月曜の朝、会社の電話が鳴ります。
デスクから取り次いで、おはようございます。
と挨拶をする間もなく、低い関西弁が飛びこむ。
あれはどうなってんのう? (インネンをつける態度風)
はあ? (質問の意図を見ぬけてない)
はあじゃあらへんで。どうなってのや! (怒り×2)
<兼高>見たかあ? (かあは上がる)
すみません見てません。 (ようやく意味だけは理解)
何してんのや! (最初の質問にようやく到達)

事情を聞くと<兼高>の中でオンエアされたCMの件
で社長がいたくご立腹。社長→宣伝部はホットライン。
代理店を飛ばして大阪から直接制作プロデューサー
に電話が入るのです。(携帯のない時代ですから翌朝一番)

大事には至らないことが多いのですが、社長の家の
テレビと宣伝部のモニターと制作会社のモニターは
共通にしてあります。こういう事態に備えるためです。

答えがなかなか出ない場合(理由不明)
昼過ぎに宣伝部課長は会社(大阪→東京)にきています。
まあその時点ではほとんど解決済みになっていますが、
なにしろ30,000人の会社のTOPがNO!と言ってるのを
一日そのままには出来ません。
スーパー(文字タイトル)が見えにくい。
画面が暗い。
音が小さい。
商品の白が白くない。
視聴者には気づかない些細なこと。
それもご自宅のテレビ視聴のことです。

解決済みのビデオを持たれて課長は笑顔でお帰りに
なる。白物家電全盛の時代は、こうやってギリギリの
ところで社長決裁を頂きながら、真夏に冬のエアコン、
真冬に夏の扇風機、春秋に冷蔵庫・洗濯機・掃除機
の撮影をこなしていました。

島田陽子さん・大地真央さん・宮崎淑子さん・東ちづる
さん、いまでいうアラサ―を主役に打倒家電三羽ガラ
ス松下・東芝・日立と闘っていました。(VS三菱はエアコンだけ)

三洋はユニークな会社です。もちろんクリエイティブ的
に上位3社のような強気の表現ではなく、あくまでも主
婦視点で喜ばれる表現の開発。
フレンドリーといえば聞こえいいですが、やや男子にと
っては緩い系。関西特性ではなくサンヨーらしさ。
そう言いながらも技術者(制作スタッフ)には高いハード
(ビジュアルや表現で尖った人たち)を要求する。

丸い器に四角いものを入れるような話を平然とされて
帰るのです。
難儀やなあ!(意味はごめんなあ)
じゃあ、あと頼むでえ。(なんとか頼むよ)

課長はなんでもわかっています。無理な注文でも仕上
げてくれるはずだ。社長の要求だから白を黒と言った
ら黒にするしかない。でも黒をグレイにすることやグレ
イと白の中間もあったほうがいい。黒と思い込んでい
る期間はそうそう長くない。(かもしれない)

答えをひとつにすると揉め事は大きくなりますが、2つ
3つと用意する事で有事の対応は出来る。
もちろん予算は1つ分。そこで頭を使って欲しいとわざ
わざ東京まで出て来て、怒りながらお願いする。

怒られながら頼まれるのはサンヨーでないとなかった。
30,000人背負ってる(しょってる)からなあ。
課長はしみじみ言いました。

その三洋がきょう、中国ハイアールに白物家電事
すべて売却というニュースがありました。従業員
はそのまま移動とのことで一安心。

でもひとつの歴史がまた、記憶の中にしまわれました。